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December 13, 2004

火垂の墓

■監督 高畑 勲
■原作 野坂昭如
■星 ☆☆☆☆

火垂るの墓 
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■説明
 空襲で突然母を失ってしまった兄と妹。おばの家に厄介になるが、おばにつらくあたられることも多い毎日。二人で暮らすことを決断する兄。しかし。。。

■感想
 今回は大幅ネタバレなので 大幅に隠しています。(日記からの転載です)マウスで反転させてください。

以前見たときには悲しくてつらい印象が強かったのですが、今回は年のせいで理屈っぽくなっているのか、それとも戦争のことを知らないせいか「なんで?」と思うことが多かったです。

 この映画を見るときに、私は兄に感情移入をしてしまいます。「自分も幼い子どもであるということを自覚しながらも、もっと幼い妹をどうにかしてまもらなければいけない」という自分の身にあまる責任を感じながらも妹のために頑張り、結局その妹を自分の力不足から失っていってしまうという悲しさがやりきれないのですが、今回はそのやりきれなさを感じ、涙をこらえられないなかにも、納得できない思いが沸き起こってきました。

 主人公のお兄ちゃん。年齢的には小学校高学年か、中学生くらいだと思います。その子がどうして全く大人を手伝わなかったのだろう。おいてもらっている家の手伝いをしないこともあり 嫌味や小言をいわれたのではないだろうか。 自炊できるくらいのことができるのだったら おばさんの家事を手伝うべきだったのではないだろうか。

 妹と二人住むようになってから 火事場泥棒をすることを選ぶ前にどうして何か働こうとしなかったのだろうか。 二人で防空壕の中で住むことができるくらいだったら、子どもでも何かできるはず。また、映画の中でもおばさんの家においてもらったほうが良いと助言があったように、嫌味を言われても、おばさんの家に戻れば配給もあり、あれほどの栄養失調で妹を亡くすこともなかったろうに。(母の着物と交換した米をおばさんに搾取されることはたしかに、おばさんソリャナイゼ!とおもったけれども) 「あやまりもしないんだよ」とおばさんが言っていたように、たとえば食器を出しっぱなしで洗ってもらったときにありがとう、ごめんなさいと言って、次回から自分であらったりおばさんを手伝っていれば多少は違ったろうに。(おばさんからすると米は迷惑料だと思っていたと思われる) また、いとこのお姉さんが「おかあさん、またきついこと言うたんやないん?」と言っていたから、そのまま家にいてもまったくの四面楚歌ということはなかったろうになあなどと思ったのでした。  

 一番気になったのは、子どもたちの悲惨な運命が戦争のせいだというよりも、「いじわるな叔母のしうちのせい」と理解されてしまうことがあるのではないか。 叔母は叔母で、たぶん’其の当時の正論’をしゃべっていたはずだと思うのでした。
 理解力に欠ける小さな子どもが戦争をしらずにこの映画を見たときに、戦争の悲惨さを感じるよりも ’叔母にいじわるされた孤児の悲しいものがたり’と理解することはないのだろうか?と一抹の不安を感じたりしました。

それにしても、皆自分が生きるのに精一杯だったとしてもそんなに生きるか死ぬかの子どもにそんなに冷たい世の中だったのだろういか? こう思うこと自体が 戦争を知らない私の現実感のない平和ボケなんだろうか?とも思いました。

 映画自体は、妹があまりにも良い子でかわいくて、また海辺などで兄と妹のたのしく無邪気に戯れるさまが、あまりにも美しいだけに話の悲惨さが際立ってやりきれません。高畑さん、うまいなあと思います。

 戦争を知らない息子のためにと思って買ったDVDですが、結局は私自身もほとんど戦争を知らないことにあらためて気づきました。今、戦争を知っているはずの世代の政治家達はどんどんと戦争向きの行動をとっているかのように見えるわけだけれども、あの人たちから見た戦争はどんなものだったのだろうか。
 あの人たちは戦争の中でも恵まれた環境であったために本当の悲惨さを経験してない人たちなのだろうかと思ったりもしました。

■追記

原作の野坂昭如の本を検索してみたら、レビューに

実際に妹さんを栄養失調で亡くしたのも本当らしいです。
映画のパンフで彼は「映画程実際妹に対して優しく接していなかった」という言葉が印象的でした。

とありました。
やっぱり私が上で書いたように、おばさんの家においてもらっていれば、妹を栄養失調でなくすこともなかったろうにというのは、戦争を知らない大甘なコメントかもしれません。
 たぶん、おなかのすいた妹は映画のようにいつも天使のように良い子ではなく、かんしゃくを起こすことも多かったとおもいますし、(子どもはおなかがすいたり眠かったりするとぐずぐずと、機嫌がわるくなります)そういう妹に対して兄はいつもいつも優しく接してないということも確かでしょう。 本は未読でしたが、読んでみようと思います。

アメリカひじき・火垂るの墓新潮文庫

■さらに追記

 今ふと思ったのですが、今回違う感想を抱いたのは、私が家庭を持っているからかもしれません。責任のない時代には、自分が気ままに食べていけばよかったわけですが、家族をもち、家族のために家事をするという経験から おばの気持ちや、周りの大人の対応のわけも少しはわかるようになってきているからかもしれないと思いました。 (子どもに説明のないまま、コメを着服したり、嫌味を言ったりするのは典型的な’継母’の姿で、肯定はしませんが、そういいたくなる気持ちも多少は理解できるというか) 

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