■著者 角田光代
■星 ★★★★
学校の青空 | |
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■説明
中学生が主人公の4編が納められた本。青空という題名とは違い、中はどうにも行き場を失ったようななんとなく薄黒い思いが感じられるような物語。
■感想
いじめが取りざたされるようになって、「今のいじめとはどんなものなのだろう」と思い読んだ本の中の一冊。
しかし、最近なんとなく思うのだけれど、私のように、最近の○○は?という情報を本やドラマに求める姿勢は間違っているのだと思う。どちらも虚構の世界だから。子どもを持つ身としては、教育的見地にたって、こういう本を読んで他人の痛みをわかる子になってくれれば良いけれど、反対に世に時々報道されるような「いじめの教科書」として使われてしまう危険性もあるなあと思ったりした。
読み終わって思ったのは、私のアプローチは間違っていたということ。今のいじめを理解するのは本ではなく子どもの生活そのものを自分の目で見て自分で中に入って考える必要がある。あらためて書くまでもなく当然のことだけれど。
さて、本の内容について。
中学校くらいの頃のことを思い出すと、私は成績はよかったけれど、決して頭の良い子ではなかったんだなと思うことが多い。勉強についてはいろいろなテクニックを知っていたが、中学から高校にかけて、友達の大人びた発言にあっと驚くことも多かった(ココで言う大人びたというのは、性的なものをさすわけではなく、きちんと自分の頭で考えたことを自分の意見として持っていることを言う)。大人の言うことをそのまま聞いていて何の疑いも持っていなかった私に時々はっとするような、「ああ、そういう見方があるな」というようなことを友達が言う。その頃はあまり深く考えていなかったけれど、私は オコチャマだったのだなとつくづく思う。
子どもの世界と大人の世界を比べたときに大きく違うと思うのは「自分」と「他人」の認識だと思う。息子は、まだまだオコチャマなので、価値観も何もかも「親の価値観」に左右されることも多い。そのまるっと親から刷り込まれた親の価値観を超えたところに「自分の考え」がある。そうして、大人になるにしたがって、「他人の考え」も意識できるようになる。 自分を第三者的な立場で見ることができるかどうかというところが、子どもと大人の大きな差ではないかと思うのだ。(成人だからといって、それが皆出来ているわけではないとも思うけれど)。
その、自分以外に他人がいる。 他人と自分の考えの相違に気がつくのが早い子たち。自分が抱えている思いを自分自身がもてあましているような子達がここには描かれている。
読んで楽しいような内容ではないけれど、子ども時代、私には明るいものしか見えなかった。そうではない世界。そういう思いを持った大人直前の子供がこの本で見えてくるような気がした。
注意)多少のネタバレ
この記事は ネタバレを含む感想です。映画の冒頭のみ知りたい方は、下の ■説明 の部分のみお読みください。
■原題 Finding Neverland
■監督 マーク・フォスター
■星 ★★★
ネバーランド | |
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■説明
劇作家の ジェームズ・マシュー・バリー(ジョニー・デップ)の新作初演の日。落ち着かない様子の彼を探す妻がいた。そうして演目は始まるが、観客には退屈極まりなかったようだ。ガッカリとしたマシュー・バリーは、妻を散歩に誘うが、どうせ、劇のことしか考えてないのでしょうからとひとりで行くように言われる。
■感想
暖かい気持ちに包まれるという前評判が悪かった。映像は確かに美しいのだけれど、どれも一歩突っ込み不足な感があり、中途半端な思いが残った。 たとえば、友達としてサポートしていたシルビア(ケイト・ウィンスレット)に対して、世間一般でいうような関係は無かったにせよ、彼の中には恋愛から愛情に変わってきた思いがあって、それでも「友情」だと認識しようとする葛藤などが本来あったと思うのだけれど、その辺があまり出てなかったみたいなんだよなあー。と。というか、別にシルビアに対する愛情でなかったとして、息子ピーターに対する愛情(これについては、中で語られているけれど)だけであったのだとしたら、そちらも中途半端。なんだか画面のこちら側に伝わってこない。
ジョニデのファンの方からすると、日ごろのアクの強い役でない役をみることができて満足度は高いかもしれないけれど、その辺がきちんとこちらに伝わらないのは今ひとつだなあと思ったのでした。 私から見ると、ジョニデの出演作の中ではいまひとつではないかという思いが強いです。
※エピソード自体が良い話というのと、映画が良くできているというのは別の問題だと思うので。
■原題 THE WHOLE NINE YARDS
■監督 ジョナサン・リン
■星 ★★★★
隣のヒットマン | |
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■説明
オズ( マシュー・ペリー)は歯科医。妻とその母と一緒にカナダに住んでいる。日々まじめに仕事をこなすオズは、妻と離婚したい。というのも、妻のソフィ(ロザンナ・アークエット)は、あまりの悪妻だからだった。そんな彼の隣に、新しい住人が引っ越してきた
■感想
邦題からして、気楽に見られるであろうことを表しているような映画。B級って呼んでよいのかな。でも、私は限りなくB級映画が好きだったんだなあと思いつつみました。ブルース・ウィリスと聞いて、「ダイ・ハード」を思い出し、「どんな映画なのかな」と多少興味があったことと、この題名をどこかで聞いたことがあったから見たということもあります。
いやー。面白かった。 まずは、ロザンナ・アークエット の変わりっぷりにビックリ。やっぱり年月というものは残酷なものなのね。 ちょっとネタバレだけれど
夫をうまいことだまそうと、「隣に越してきた人が私にチョッカイを出そうとした。」なんてロザンナは夫(マシュー・ペリー)に言うのだけれど、まずは夫が「そんなこたあ、ないだろう」と最初から相手にしないし、あまりにもそう言い張る妻に向かって「よっぽどの理由があったんだろう」などという暴言ぶり。で、結局その隣人であるブルース・ウィリスに「妻がこういっていたけれど」と確認するマシュー・ベリーに ブルース・ウィリスは「いや、君の奥さんはタイプじゃない」なんていわれて、画面のこちらで、「そうよねえ〜。あれじゃあねえ」なんて妙に納得される役って、女優としてはドウヨ? なんておもいつつ見ました。
観客に、そういうことを納得させる役をやるという女優っていう職業って、結構残酷。
題名がヒットマンなだけに、やっぱり人はガンガン死ぬわけだけれど、コレが妙に軽いノリ。最後は人が死んでもやっぱりハッピーエンド。。(で、イインカイ?)とつっこみながらも楽しんで見ました。(これくらいオバカなコメディだと、現実味がなくて作り話を楽しめるような気もします)
ロザンナに引き換え、 ナターシャ・ヘンストリッジがチョット冷たげないい女を。 アマンダ・ピートもどこかヘンテコなかわいらしい女を演じています。
■原題 LA MARIEE ETAIT EN NOIR
THE BRIDE WORE BLACK
■監督 フランソワ・トリュフォー
■星 ★★★★
黒衣の花嫁 | |
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■説明
自分の部屋であろう場所で何かに嘆いている女性。衝動的に窓から飛び出そうとする女性を、年配の女性が引き止める。
場面が変わり、トランクに荷物を積め、旅支度をしているような女性。洋服は黒い洋服ばかりなのが目につく。彼女は何者なのか?
なぜ嘆いていたのか。 窓から飛び出そうとしたのは、何をしようとしていたのか。 観客は映画のしょっぱなから、沢山の疑問を持つことになる。そうして、なぞめいた女性のことが少しずつあきらかになってゆく
■感想
フランソワ・トリュフォーは、随分有名な監督だ。私も名前くらいは聞いたことがある。でも、どんな映画が彼の映画なのかということは知らなかった。 主役のジャンヌ・モローも名前だけは聞いたことがある大女優。 そういう昔の名作も見ておきたいと思ってエアチェックした。 アマゾンで検索するとDVDは見当たらなかった。
この映画を、何の前提知識もなく見たことは大変ラッキーだったと思う。 ジャンヌモローは、この当時40歳くらいで、ちょっとふけていてヒロインにするには、ちょっと。。と思う場面も多かったが、良く見ていると、相手役の男性も皆老けていて、「今の映画界の若年化が進んでいるだけかもしれないな」などと思った。
映画撮影のテクニックなどはよくわからないけれど、このストーリー展開の巧さが印象に残った。 バラバラにつなぎ合わされた場面が次第に意味をもったものとして観客に捉えられる。 たぶん、物語の中の相手たちも、なぜ自分がターゲットになるのか気づかない人も多かったと思う。 彼らに共通するものは何なのか。彼女目的は何なのか。 そんな疑問とそれに対するヒントで 観客は少しずつ彼女の目的を知ることになる。
映画を見る者たちは性別も学歴も国籍もetc.全て違うそういう広い範囲の人たち全てに、言葉で直接的に説明するわけではなく、少しずつ物事の糸口を見せ、それを解き明かしたいという気持ちにさせることができるということは、何気ないことのようでとても難しいことだと思った。
私も、最初退屈だと思っていたし、フランス語でさっぱりわからないし(字幕はついていました)で、なかなか入り込めないのではないかと思ったけれど、最初の事件が始まったあたりで、この映画が気になって気になって、最後までじっくり見てしまったひとりだ。