■著者 リリー・フランキー
■星 ★★★★
東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~ | |
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■説明
リリー・フランキーの生い立ちから 題名の通り母と父との関わりなどを通して書かれた自伝?
■感想
「泣ける本」というのを聞くとどうも斜にかまえてしまって買おうと思わないのが最近の私のパターンなのだけれど、テレビの2時間ドラマで大泉洋と田中裕子の演技を見てから「原作も読んでみたいな」と思って購入した。
読みながら、テレビの内容と本の内容の差をみるにつけ、脚本家のうまさと、田中裕子の存在感を再認識した。 テレビの方はテレビの方で一つの世界が出来上がっていた。 それでは本はどうなんだ?と聞かれると、これもよかった。 テレビはオカンがほとんどありえないほどすばらしい人として認識できたが、本の方は実在の人物として存在感があった。そうして、まるで知り合いの話を聞いているかのように心に響いた。
この本には母の愛が詰まっている。
女手ひとつで息子をそこまで育てるということ。私には到底できそうもない。世では人を人とも思わないような犯罪のニュースが絶えないし、自分がラクや贅沢をするために人をあやめたり、陥れたりということが日々報道される。 男も女も働けといわれ、会社で働かないものには価値がないかのように値踏みされる世だ。 でも、たとえ、日々の生活に困らない程度のお金があったとしても、人が人らしい生活を送ることができる環境を作り出すことがそう簡単なものではないということをこの本を読むと思い知らされる。 家族にとって快適な生活は、収入の云々ではなく、母・妻の力量に依存するんだなあ。私は オカンの足元にも及ばないと自分のことを振り返った。
この本を読んでよかったと思う。
■著者 浅田次郎
■星 ★★★★
姫椿 | |
![]() | 浅田 次郎 文藝春秋 2003-09 売り上げランキング : 56181 おすすめ平均 ![]() ![]() ![]() ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■説明
浅田次郎は 映画、鉄道員(ぽっぽや)、地下鉄(メトロ)にのっての原作者。静かで暖かい8話の短編が入っている。
■感想
ぽっぽやも、メトロにのっても見ていない。興味を持ったのはメトロに乗っての映画の予告編を見てどんな映画か知りたかったことから。
たまに、ブラックな終わり方をする短編もあるけれど、ほとんどの短編がじんわりと暖かな印象を残すものが多い。 登場人物に嫌な人物が少なく、皆昔ながらの人情やら常識やらを持っている人たちが多いからではないかと思った。
なんとなく結末がわかってしまったのだけれど、それでも好きだったのは最後の「永遠の緑」。
■著者 小川 洋子
■星 ★★★★
博士の愛した数式 | |
![]() | 小川 洋子 新潮社 2005-11-26売り上げランキング : 1810おすすめ平均 ![]() ![]() ![]() ![]() |
■説明
家政婦をしながら息子(10歳)を育てている主人公の派遣先は、いままでに家政婦が替わった数をあらわすカードの裏の星の数の多さから、なにか問題がありそうなところだと予想できた。
面接のときから、風変わりな様子が感じて取れたのだが。。
■感想
映画になったり、ベストセラーになったりしたので、多くの人が名前は聞いたことがある本だと思う。私も今頃になって読んでみた。
いままで数字というものは私にとって面倒で、現実的で、ロマンの一かけらも感じることがないもので、愛情をそそいだり賛美したりする対象ではなかったのだけれど、博士の言葉を追うにつれて、博士が数字に心酔している様子、数学の面白さというのをこの本を通して垣間見ることができたようにも思う。
80分しか記憶を持たないエンドレスな博士の特殊な世界に飛び込んだ主人公たちが体験する小さななタイムスリップ感、異次元感。でも、その違和感をのりこえて、表面にみえていなかった博士の人間らしい感情や豊かな愛情に気づき、人と人との関わりが成立していく過程を通して、読者の私も一人の人(博士)の理解を進めることができたというやわらかな喜びを感じ、読後感は、ゆるやかな透明な水の中を流れていたような心地よいものだった。
■著者 浅田次郎
■星 ★★★
見知らぬ妻へ | |
![]() | 浅田 次郎 光文社 1998-05売り上げランキング : 631611おすすめ平均 ![]() ![]() ![]() ![]() |
■説明
貧乏だったり、人生がうまくいかなかったりしたような人たちの小さな物語が8編入っている短編集
■感想
映画の原作が浅田次郎だと知り、一度も読んだことがないことに気がついて、その映画も見ていないのに、気になって購入した本。
今の世の中というよりも、映画であればセピア色。戦後の時代ではないかと思う。
全部が全部ハッピーエンドではないのに、なぜかどれも読後感がさわやかなのはどうしてだろう?と考えた。
良く考えてみると主人公が誰も皆、日本人が昔から持っていたような心根の美しさがある人たちだからではないかと思う。
今の世の中ではなかなかこういう考え方に出会うことが少ないからこそ、 戦後の時代ではないかという印象を持ったのかもしれない。
■著者 ジョディ・ピコー
■星 ★★★
わたしのなかのあなた | |
![]() | ジョディ ピコー Jodi Picoult 川副 智子 早川書房 2006-09売り上げランキング : 135238おすすめ平均 ![]() ![]() ![]() ![]() |
■説明
アナの姉ケイトは、白血病。 その姉に完全に適合するドナーが家族にもいなかったことから、アナの母はアナを出産することを決意する。ケイトの命を救うためのデザイナーベビーがアナだ。
生まれてすぐに 臍帯血を提供したのが、彼女のはじめてのドナー経験。それからケイトの病状が悪化するたびに何かの提供をしてきた。 そのアナが、両親を相手取って訴訟を起こすことを決意した。もうこれ以上ドナーとして臓器を提供したくないというのだ。
■感想
まず、正直に言うと最初はとても読みにくかった。各章が登場人物の目からみたある時点でのこの物語への関わりという形で書かれているので、最近そういう形式になれていない私は それになれるまでかなり時間がかかってしまった。
それから、この物語の概要を聞いたときに、私はてっきり「命の尊厳や人格についてが一番大きなテーマであろう。それに敢然と立ち向かう弁護士の物語だろう。」と思い込んでいたところも、「なんだか違う」と気づいたのが中盤過ぎだった。 アマゾンの書評にも「期待はずれ」という評価があるが、たぶんその方は別の観点での本を期待して読まれたのだと思う。
読み始めて中盤になる頃まで 母の身勝手な論理に憤りを覚えながら読んでいたのだけれど、淡々とそれぞれの視点で書き進んでいる章を読むことで、傍の人間からは図り知ることが出来ないそれぞれの登場人物の苦悩や迷い、考え方などを知るにつれ、色々な登場人物の考えも理解できるようになってきた。
ラストは 私はとても残念に感じた。
邦題の わたしの なかの あなた は物語の内容を考えると良い題だとおもえるけれど、My Sister's Keeper の方がインパクトがあったなあと思う。