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May 31, 2006

家守綺譚

■著者 梨木香歩
■星   ★★★★★

家守綺譚
家守綺譚梨木 香歩

新潮社 2004-01
売り上げランキング : 9197

おすすめ平均 star
star昔の事
star感じたものは、そこにある
star新作だぁ〜

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 家族と一緒の生活は、純粋な自分の時間というものが少なくなり、その代わりに家族と一緒の時間が増え、そうして家族共通の記憶が残っていく。それは、生命感に満ち溢れていると同時に、そこには「日常の雑事」と一言で表現できる心配や幸せが詰まっている。今の自分は、こうやって家族と一緒に暮らしていてたしかに幸せだと思う。けれど、たまにこの本の主人公のように、流れる水の中に漂っているかのごとく、もしくは、心地よくひんやりとした5月の乾いた風の中に立つがごとく、自然や時の流れによりそって静かな時間をすごしてみたい。そんな気もする。
 つまり、気ままな一人暮らしがふととんでもなく懐かしいもののような気がするときがある。 

 家に住んだ頃から、主人公綿貫の周りには不思議なことが起こりはじめるのだけれど、それは奇異なことでありながら、あって当然のこととまわりの人々も受け止めているので、 「ああ、世にはそういうこともあるのか」と読み手の私も一緒に不思議の世界へいざなわれる。

 28の章にはそれぞれ 植物の名前がついている。 サルスベリの季節からはじまり、次のサルスベリが咲くころまでの約一年間の話だ。

 どれも好きな話ばかりだったが、特にと考えると、

ヒツジグサ(最後のところが特に好き)
ツリガネニンジンの

 河童が二、三日逗留していたようだったが、ゴローがまた朽木村まで送っていった。
−河童はなれなれしいところがあるから、あまり深入りしないよういゴローにいっておかないと。今度のはわざとらしい。

 というところ、  

南蛮ギセル
ホトトギス
そうして最後の、葡萄

 どこが好きだとかきつくしてしまいたいと思う気持ちもあるけれど、書いてしまっては全てが現実にもどってしまい、ふわふわと感じているこの本に惹かれる気持ちが消えてしまうような無粋な気がして、そういう気持ちはたまにはひそかに自分の心の中にしまっておいてもよいかもしれないななんて思ってしまう。

 同じようにこの本が好きだという人と ゆっくりと話せるときまで自分の心のなかにしまっておきたい物語だった。

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