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September 19, 2006

【ネタバレ】 死ぬまでにしたい10のこと

注意)ネタバレ
この記事は ネタバレを含む感想です。物語の冒頭のみ知りたい方は、下の ■説明 の部分のみお読みください。

■原題 My Life Without Me
■監督  イザベル・コヘット
■星  ★★★(よくできているとおもうけれど、日本語題名、日本語訳に??で★一つ減点)

死ぬまでにしたい10のこと
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■説明
 アンは、娘二人と夫とともにトレーラーハウスに住んでいる。失業中の夫の新しい職も決まりそうで喜んだのもつかの間、家で倒れてしまい、病院に運ばれる。

■感想
 ネットで感想を検索してみると、評価が二分している映画。
私はといえば、録画したものを観たのだけれど、最初の最初から躓いてしまいました。何に躓いたかというと、字幕で「私」と出ているのに映画の中では[you]とナレーションが入っていて、しょっぱなから「アレ?」と疑問がわいて映画に入り込めなかったのです。 頭の中には、「それじゃ、この映像は 『貴方がこうだと想像』というところを「私はこうだ」ということにすりかえられているのかな?などと考えながら、「映画の翻訳って難しいだろうけれど、意訳が激しいと、本来の映画の作り手の狙いまで変わってしまうのではないだろうか?」と思ってしまったりしました。

This is you. Eyes closed, out in the rain.

You never thought you'd be doing
something like this.

You never saw yourself as,

l don't know
how you'd describe it, as...

のyouが全部 「私」と訳されていたら 「あれ?なんか違うんじゃ?」と思いませんか?

 同じく、題名の「死ぬまでにしたい10のこと」これも原題の「My Life Without Me」とはゼンゼン違いますよね。 たしかにこの題だからこそ 「どんな映画だろう」と見てみたいという思いが強まったことはたしかで、私なしの私の人生。私がいない私の人生。などだったら果たしてこの映画を見たいと思ったかどうか?
 夫に話してみて思ったのですが、私も夫も邦題の方が「見たい」という気持ちはかきたてられるという結論でした。ということは、たくさんの人に見てもらってナンボの映画としては、この日本人ウケしやすい題名は成功しているのかな?と。

 しかし、たとえ「つかみはok」だったとしても、違う内容を予測するような題だと、映画に失望して面白くなかったと感じる人も多いのではないでしょうか。

<以下完全ネタバレなので色を変えます。マウス反転して読んでください>


「死ぬまでにしたい10のこと」にしてしまうと、この映画は
ただの不倫映画になりさがってしまう。 ただの主人公のワガママ映画の印象が強まってしまう。

 「だって、死ぬまでにしたい10のことって、夫に新しい女性を世話して、自分は新しい恋をみつけ、相手を夢中にさせること。なるほど、素晴らしい」なんてすぐに考えるかな?? 自分が死ぬことがわかっているのに、相手を自分に夢中にさせて自分が死ぬってものすごく残酷じゃない?エゴじゃない? 夫はいい人だし、夫婦円満じゃない?自分も不満ないみたいじゃない?なのになぜ?不倫?? なんて思い始める人もいると思います。この邦題だと。 
   
 そうして、原題だとしっくりくるような気がします。

 やりたかったことの中に「恋をして相手を夢中にさせる」というのがあるのは 原題で公開されようと邦題で公開されようと、私としては自分のエゴだとしか思えないし、私だったらそれをリストにあげないだろうと思うけれど、それは、見ている私の人生ですよね。 彼女にしてみれば、恋というものを実感する前に子供が産まれそのまま 大変な生活に流されてしまった人生だし、まだ自分は若いし、恋をしてから死にたいと思ったのかもしれない。良いとか悪いとかこういう生き方が好きとか嫌いとかそういうことは抜きにして、そういう人もいるかもしれないと見ることはできそうに思います。 
 
 個人的な好き嫌いは置いておいて、静かな淡々とした雰囲気に、ひきつけられる映画です。そうして、「もし私の命の期限が近い言われたらどうするだろうか」と少なからず考える機会になりました。
 
 アンは、父親は服役中、夫は失業中。かわいい娘は二人いるけれど、経済的に自立していない結婚であったために、母親の家の庭のトレーラーハウスが自分の家であり、経済的にも苦労しています。
おまけに、とうとう死期の宣告までされてしまう。 でも、彼女には不幸そうな様子は微塵も見えません。 かといって、立ち向かおうという傍からみると疲れてしまうようながむしゃらな頑張りをするわけでもなく、水が流れるように自分の人生をすんなりと受け入れて素直に、周りの人々を受け入れて生きていました。その生命が、彼女が自分の死んだ後の人生を作り上げようとして、人と関わって結果自分の歩んできたレールを未来につないでいるんだなあなどと思いました。


ラストに近いところ 調子が悪くて寝ているアンが70年代風ビーズカーテン越しに隣人と自分の家族が楽しく歓談している図からその後へつなぐ部分もすごく印象に残ります。彼女が死んだり苦しんだりする場面がないまま死後につなぐところも、彼女の人生が続いているのだと受け取れました。

 映画の感想を見ていて「My Life Without Me」というのは彼女が死んだ後の話ではなく、彼女が今まで生きていた時間なのではないかという感想がありました。 なるほど。そうかもしれない。自分の人生と実感する前に日々忙殺されていた人生でしょう。
 そう思いながらも、日々それでも笑顔を絶やさず、人生に疲れている様子が見えなかった彼女のことや、ラストの場面などを思い出すと、「やっぱり彼女が死んでからも彼女の人生が続いているんだ」と私は思いたくなりました。
 個人差があっても寿命があるのが 生き物の定めです。私も寿命があるのだったら、彼女のように自然に自分の人生の続きを託すような気持ちで、残る人たちへの思いやりを忘れずに死ぬ準備ができたらいいな。。と思いました。

 でも、私だったら、彼女ほど強く自分だけの秘密として守ることができるかな?自信ありません。

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