■著者 梨木 香歩
■星 ★★★★
裏庭 | |
梨木 香歩 新潮社 2000-12 売り上げランキング : 5,945 おすすめ平均 一語一語が直接心に響く物語 強さと脆さと優しさと 梨木さんのお話は大好きです。 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■説明
「丘の麓のバーンズ屋敷に何か秘密があることは、当時その辺りのこどもなら誰でも知っていた。」とはじまる。 主人公の照美の両親は、共働き。帰ってくるのはいつも十一時過ぎ。照美には双子の弟純がいたが、六年前に風が原因で肺炎を併発して亡くなった。
■感想
西の魔女が死んだ を読んだときにはそんなに印象が強かったわけではなかったので、とりたてて 裏庭を読みたいと思っていたわけではないのだけれど、なんとなく購入してしまったのがこの本。 ところが、この本は私の期待を良い意味で大きく裏切る本だった。
なによりも、一つ前に読書記録をつけた宮部みゆきの 鳩笛草の点数が低くなってしまったのは、この本を読んでしまったからだと思う。
おもえば、息子がこの年になって本を読み始めるまでは、私はいまさら自分が児童文学を読むようになるとは思わなかったし、たしかに昔懐かしい本をもう一度読みたいと思うことはあっても、児童文学に はまっている人を 心のどこかで不思議に思っていたように思う。けれど、児童文学の世界を大人になってから体験してしまうとこれがまた目くるめく世界であり、大人が読む本の物語の薄っぺらさに驚いてしまう。 この本は、子供向けの本の中で私に印象深い本のひとつになった。
だいたい、この本を購入したときには普通の文庫本で、児童文学だなんてゼンゼン意識していなかったのだ。ところが、物語の中盤で、あることが起こってから「あら?この本、こういう本だったの?」と軽く驚いた。
この本は児童文学であると思う。でも、私は過ぎ去った子供の気持ちに立ち返って読むと同時に、親の視点でもこの本を読んだ。
裏庭での3つの国のオババたちの話も、もちろん、心に深く問いかけるできごとではあるのだけれど、それと同時に私は父の気持ち、母の気持ち、それから母の母の気持ちとさかのぼってそれぞれに感情移入して読んだ。特に、ほとんど脇役である父の気持ちにはつい涙が出てしまった。
さて、おばばたちの話は、ネタバレになるので、以下マウスで反転させて読んでください
アェルミラ
皆、だんだん無口になった。自分より他のものに関心がもてなくなってきたのだ。傷を負うことを恐れたのがそもそものことじゃ。
チェルミュラ
傷が、その人間の関心を独り占めする。傷が、その人間を支配してしまうのだ。本当に、癒そうと思うなら、決して傷に自分自身を支配させてはならぬ。
そうして、サェルミュラでは。。
あとは読んでみてください。