■著者 村中李衣
■星 ★★★★
カナディアンサマー・KYOKO | |
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■説明
主人公の杏子は、カナダに住む小学校中学年。家を借りる日本人家族との交流を交えての日常。
■感想
読み進めていくうちに あれ? あれ? と当然すでに語られているがごとくに出てくる描写に違和感を覚えながらページをめくると、だんだんと杏子の身の回りのことが理解できてくる。
文章は登場人物の心情を説明することもなく、まるでガラス張りの向こうを覗きみているかのように、大きな波もなく淡々と進んでいるのは、江国香織の本のようで、オシャレな感じさえする。
子どもがこういう本を読むのかなあ?とおもいつつ背表紙を見ると「童話パラダイス」とあり中にも振り仮名がついていることからやはり子ども向けの本であるようだ。
もし、この中の登場人物にまったく自己投影することなくこの本を読んだら、もしかするとこの上もなく退屈な本かもしれない。刺激的な内容がざっくりと書かれているわけでもなんでもないのだから。
でも、私は杏子の気持ちが少しわかるような気がしてつい泣けてきてしまった。 淡々となんでも器用にこなすKYOKOはたぶん思い切り心の中では背伸びをしているのだと思った。
ひっこしていくふみさんに、まるでふみさんが子どもで杏子が大人でもあるかのように語る言葉、これは紛れもなく杏子が日々自分に言い聞かせている言葉ではないかと思えたのだった。
あとがきで、KYOKOが実在の子だと知った。