■著者 宮部みゆき
■星 ★★★★
竜は眠る新潮文庫
■内容
雑誌アローの記者 高坂は、嵐の中自転車がパンクして立ち往生している少年を見つける。
彼を車に乗せて走っている最中に、子どもの行方不明事件に関わることになる。
■感想
一転二転するストーリー。登場人物一人一人の人物描写がうまく、一気に読み終わった。
犯人について、動機については後半「なんとなく、そうかなあ」とわかり始めるが、この本は推理を楽しむものというよりも、話全体の流れを楽しむことができる本だと思う。
以下大幅ネタバレ
超能力を持ち、他人の思考が読めてしまう、その主人公の苦しみの感覚というのを丁度、最近起こった事件について、ネットの難しさを考えている最中であったため、ああ、なるほどと感じるような気がした。
通常私たちが暮らしている場合、相手の思考が相手がしゃべりもしないのに 勝手に自分の耳に入ってくることはない。また、見ず知らずの人の考えを偶然見聞きすることもない。
しかし、ネットの世界は、見知らぬ他人の考えを通りすがりに見てしまうこともあるし、それは、まったく前触れもなく自分の目の中に入ってくることも多い。それについて自分が義憤を感じたり、同情したり、嫌悪感を感じたり種々の感情を抱いてしまうことがある。
超能力を持つ一人の少年は、超能力で知りえた内容に肩入れすることを避けて生きてきた。もう一人の少年は、関わらないほうが良いといわれてもどうしても自分が正しいと思う行動をとり、関わってしまう。
ネットと似ていると思うことで、より一層少年達の苦しみや葛藤というものを身近に感じることができたように思う。
なによりも、この本の結末が希望をもてるものであることが今の私には好ましいと思えた。