■著者 角田光代
■星 ★★★★
学校の青空 | |
角田 光代 河出書房新社 1999-05 売り上げランキング : 90677 おすすめ平均 直木賞作家の初期作品集 幼心に潜む陰 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■説明
中学生が主人公の4編が納められた本。青空という題名とは違い、中はどうにも行き場を失ったようななんとなく薄黒い思いが感じられるような物語。
■感想
いじめが取りざたされるようになって、「今のいじめとはどんなものなのだろう」と思い読んだ本の中の一冊。
しかし、最近なんとなく思うのだけれど、私のように、最近の○○は?という情報を本やドラマに求める姿勢は間違っているのだと思う。どちらも虚構の世界だから。子どもを持つ身としては、教育的見地にたって、こういう本を読んで他人の痛みをわかる子になってくれれば良いけれど、反対に世に時々報道されるような「いじめの教科書」として使われてしまう危険性もあるなあと思ったりした。
読み終わって思ったのは、私のアプローチは間違っていたということ。今のいじめを理解するのは本ではなく子どもの生活そのものを自分の目で見て自分で中に入って考える必要がある。あらためて書くまでもなく当然のことだけれど。
さて、本の内容について。
中学校くらいの頃のことを思い出すと、私は成績はよかったけれど、決して頭の良い子ではなかったんだなと思うことが多い。勉強についてはいろいろなテクニックを知っていたが、中学から高校にかけて、友達の大人びた発言にあっと驚くことも多かった(ココで言う大人びたというのは、性的なものをさすわけではなく、きちんと自分の頭で考えたことを自分の意見として持っていることを言う)。大人の言うことをそのまま聞いていて何の疑いも持っていなかった私に時々はっとするような、「ああ、そういう見方があるな」というようなことを友達が言う。その頃はあまり深く考えていなかったけれど、私は オコチャマだったのだなとつくづく思う。
子どもの世界と大人の世界を比べたときに大きく違うと思うのは「自分」と「他人」の認識だと思う。息子は、まだまだオコチャマなので、価値観も何もかも「親の価値観」に左右されることも多い。そのまるっと親から刷り込まれた親の価値観を超えたところに「自分の考え」がある。そうして、大人になるにしたがって、「他人の考え」も意識できるようになる。 自分を第三者的な立場で見ることができるかどうかというところが、子どもと大人の大きな差ではないかと思うのだ。(成人だからといって、それが皆出来ているわけではないとも思うけれど)。
その、自分以外に他人がいる。 他人と自分の考えの相違に気がつくのが早い子たち。自分が抱えている思いを自分自身がもてあましているような子達がここには描かれている。
読んで楽しいような内容ではないけれど、子ども時代、私には明るいものしか見えなかった。そうではない世界。そういう思いを持った大人直前の子供がこの本で見えてくるような気がした。