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October 08, 2005

夏の庭

■著者 湯本 香樹実
■星 ★★★★★

夏の庭―The Friends
4198613591湯本 香樹実

徳間書店 2001-05
売り上げランキング : 44,958

おすすめ平均 star
star現代世界文学のスタンダード
star年齢を問わずおすすめ
star色褪せない物語

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■説明
小学校6年の夏、でぶの山下が学校を休んだ。おばあさんが亡くなってお葬式へでていたらしい。いままで想像の世界でしかなかった 「死」というものに遭遇した主人公たち3人はそれから怖い夢を見たり 死とはなんだろうと突き止めたい思いに駆られる。
 河辺は、近所にすんでいる死にそうだと思われる一人暮らしの老人の死ぬところを見ることで死とはどんなものかを知ろうとボクと山下に言う。気が進まない僕と山下。しかし、死について思いがまさり、僕たちは老人の家を見張ることにした。
 どこの町にでもありそうな一人暮らしの老人の家はゴミ袋が詰まれ、住んでいる老人は夏なのにコタツに入ってテレビばかり見ているようだ。

■感想
たぶん小学校高学年から中学生あたりを対象として書いた本だと思われます。
テーマとしては12歳の少年たちの忘れがたい夏ということで 映画「スタンド・バイ・ミー」みたいなものかな?と軽く読み始めたのです。ところが、スタンド・バイ・ミーは見た当時私はあまり感動しなかったけれどこの本はずっしりと心に響きました。

 子どもたちからすると 老人はただ未知のものであり自分の世界には存在しないような存在だったわけです。もちろん相手は赤の他人で言葉をかわしたこともないわけですし。当初は動物でも見るかのように老人に接していた彼ら。
 老人も長い間世間から隔絶されて(いえ、自分から世間を隔絶して)生きてきて、その仲間はずれ感になれきっている。身の回りが皆敵だとでも思っているかのようなそういう気持ちになっている。

 その老人と子どもたちが出会って、だんだん話をしはじめた。 それによって、老人を人として認めはじめる子どもたち。 そういうかかわりを通して 世捨て人だった老人がまた 一般社会の一員として認められていく様子。 そうして、子どもたちの老人への思い。
 老人とかかわることで、その老人とだけでなく、彼らの世界は確実に広がっていきました。
いままで、家族と友達だけしかいなかった自分の世界に、「その他」としてしか認識されていなかった人々が皆生き生きとそれぞれ「一人の人」として認識されます。 

 

そんなにたくさんの思い出がこのふたりの中にしまってあるなんて驚きだった。もしかすると、歳をとるのは楽しいことなのかもしれない。歳をとればとるほど、思い出はふえるのだから。そしていつかその持ち主があとかたもなく消えてしまっても、思い出は空気の中を漂い、雨にとけ、土にしみこんで、生き続けるとしたら...

子ども向けの文学ではあるけれども、大人の私が読んでも、老人・戦争・死ぬということ などたくさんの思いを引っ張り出して、そうして あらたな想いへと導いてくれた本でした。
これも、 手元においておきたい本。 児童文学ってすごいなあと、思う一冊です。
 

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