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September 05, 2007

一瞬の風になれ 1 イチニツイテ

■著者 佐藤 多佳子
■星   ★★★★★

一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--
一瞬の風になれ 第一部  --イチニツイテ--佐藤 多佳子 講談社 2006-08-26売り上げランキング : 2184おすすめ平均 starstarディテールstar申し分の無い、陸上青春小説だけどstar昔懐かしいあの青春の頃を思い出させてくれる!Amazonで詳しく見る by G-Tools

■説明
 俺の兄貴はサッカーでも、偏差値の高さでも有名な私立高へ通っている。そうして、家族からも、一般からも期待されたサッカー選手。弟の俺からみてもかっこいい兄だ。 しかし、俺は兄にはまったくかなわない。同じ学校の初等科受験を風邪でふいにしてしまい、編入試験にまで落ちてしまった。おまけに、サッカーも ヘボイ。 そんな俺は、友達の連にさそわれてひょんなことから陸上部に入ってしまう。 

■感想
 3巻まであるのに、1巻しか借りてこなかったことをものすごく後悔した。はやく次が読みたい! DIVE! や バッテリーと並ぶと評されて両方面白く読んだ私は 「んじゃ借りてみるか。」と軽い気持ちで借りたスポーツ青春物。
 しかし、手に取ってみると DIVE! バッテリーよりもかなり字も小さいし、控え目な装丁。 むむむ???

 私はバッテリーよりも数段面白いと思った。(バッテリーも読むと止まらないといえば止まらないが、アリエナイほどの天才少年の話で、なんだか大人からするとちょっとアニメやマンガのように調子良すぎると思うんだなあ) この本の主人公のオレはなんといっても 今のところ天才じゃない。もちろん天性のものを持っているらしいけれど、周りの天才たち(身の回りにこんなに天才がいたらすごいね)を素直に「カッコイイ」と認めている。「もしかして未完の大器なの?」と聞かれて 「『ウン』とか言ってみたいね。」なんていうこの感じ。冷静でまっすぐで自然でいいなあー。いいなあー。と 俺の性格の良さにすっかり惚れこんでしまっている私なのだ。さて2巻目はどうだろう。 

しゃべれども しゃべれども

■著者 佐藤 多佳子
■星   ★★★★★

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)
しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)佐藤 多佳子 新潮社 2000-05売り上げランキング : 908おすすめ平均 starstar以心伝心じゃだめなときがあるからstar涙がほろりstarあんま動きがないかな・・・・Amazonで詳しく見る by G-Tools

■説明
 主人公の達っちゃんは、噺家。今昔亭三つ葉という名前で、まだ「二つ目」だ。 そんな 彼に 「しゃべりのプロだから、話し方を教えてくれ」という友達の頼みを聞くといつのまにか話し方を教えてほしいという人たちがあつまってきてしまったのだが。

■感想
 人が良い達っちゃんの生徒は皆、なにかしら 「ワケアリ」らしいが、ちっともそのワケが見えてこない。そうして、話し方を習いたいんだか習いたくないんだか。落語が好きなんだか好きじゃないんだかわからない。 それでも、達っちゃんは ムリにそのワケを聞きだすでもなく 自然に 皆とゆるゆるとした結びつきで過ごすけれど、そのぬるい感じが絶妙であり、またじれったくもあり。そうこうしているうちに登場人物の一人一人が気にかかり始めすっかり自分も達っちゃんの知り合いの知り合いぐらいのつもりでいることに気づいてしまう。 
 すぐに白黒つけたがる。結果をすぐに求める。というのは外国のことで、日本人はあいまいすぎると私の子供のころに聞いたことがあったけれど、ふと気がつくと今の世の中、そのころの外国並みに 白黒をつけて、結果をすぐに求めるようになってしまったことに気づく。
 昔の日本人ならばだれしも持っていた、一見あいまいなように見えても、相手をゆるく深く思いやる心、相手を尊重する心やおくゆかしさというものは、失いかけてみると貴重なもののように思える。今は、言わない方が非難される世。昔の日本の察する文化の方がいまになってみると数段上を行っていたように思う。

 この本を読みながら、そんなことをつらつら思った。

激しくはないけれど、じんわりとあたたかく面白い話だった。

 

手紙

■著者 東野 圭吾
■星   ★★★★★

手紙 (文春文庫)
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■説明
兄は、強盗しようと思った。父と母を亡くし、弟と二人きりの兄、剛志は金に困っていた。成績の良い弟を大学に進学させたいのに、生活費にも事欠く毎日。おまけに、学歴がないために就ける仕事は肉体労働くらいしかないのに、腰を痛めてしまい収入の道も閉ざされそうになっていたのだ。

■感想
 映画公開当時gyaoの試写会に当選して映画を見た後の本。「もう筋を知っているからどうかな?」と思いつつ読み始めたが、しっかりと最後まで読んでしまった。映画と多少設定が違う場面もあったけれど、ほぼストーリーは同じ。
  
 一言では感想が書けない考えてしまうストーリーだ。私は世の中の不当な差別はするべきではないと考えているのだが、この本を読むと差別の難しさを痛感する。 たとえば、差別をすまいと意識するがあまり、却って通常ではありえない対応をすることはないだろうか。 常々噂で人を判断すまい、自分の目でみて自分の感覚で判断しようと思っているけれど、そうすることによってたとえば自分の家族にも被害が及ぶようになったらどうするだろう?
 やっぱり最後は家族を守るしかなくなるのではないか?

悪いのは差別をする世の中だとわかりつつ迎合して生きていくしかないのだろうか。 などと考えたりもした。 結局結論は出ないままだ。いや、結論を出すことが怖いのかもしれない。だから出さないままにしているのかもしれない。

手紙 スタンダード版
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 映画の方の感想は、その時の記録から転記します。

最初に満開の桜からはじまります。今から秋・冬を迎えるのに、なぜ?今の公開?と不思議な気がしました。 桜が意味するテーマに 物語の中盤以降にやっと気づきました。白石由美子役の沢尻エリカの力強さがとても印象に残り、前向きの力を与えてもらえるような気がしました。かわいいけれど、明るく強い視線が頼もしかったです。
竹島剛志役の玉山鉄二(良く知らなかった俳優さん)が、すごく上手い。ラストが印象的でした。

その時の記憶で 映画を見たときにこの動機に現実味が感じられないと思っていたことを思い出した。 映画の場合、シーンを実際に映像として目で見てしまう。その画像を見て「古い」「昔っぽい」と私は判断していたのだと思う。ずいぶん昔の話を見せられているような気がした。 目で情景を見たとき、まず「いつごろの話だろう?」などそのシーンをもとに人は無意識に言葉で語られない部分を補完しようとする。そういう点で 映画は映像でイメージを固定してしまうので印象が変わる場合もあるなあなどと思ったりした。

 本の場合、はその時間の判断は使われている言葉で行われることが多いように思う。「公園デビュー」など、いまの世で使われている言葉を見ると現在に近いことなのだと私は判断しているようだ。