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■著者 佐藤 多佳子
■星 ★★★★★
しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫) | |
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■説明
主人公の達っちゃんは、噺家。今昔亭三つ葉という名前で、まだ「二つ目」だ。 そんな 彼に 「しゃべりのプロだから、話し方を教えてくれ」という友達の頼みを聞くといつのまにか話し方を教えてほしいという人たちがあつまってきてしまったのだが。
■感想
人が良い達っちゃんの生徒は皆、なにかしら 「ワケアリ」らしいが、ちっともそのワケが見えてこない。そうして、話し方を習いたいんだか習いたくないんだか。落語が好きなんだか好きじゃないんだかわからない。 それでも、達っちゃんは ムリにそのワケを聞きだすでもなく 自然に 皆とゆるゆるとした結びつきで過ごすけれど、そのぬるい感じが絶妙であり、またじれったくもあり。そうこうしているうちに登場人物の一人一人が気にかかり始めすっかり自分も達っちゃんの知り合いの知り合いぐらいのつもりでいることに気づいてしまう。
すぐに白黒つけたがる。結果をすぐに求める。というのは外国のことで、日本人はあいまいすぎると私の子供のころに聞いたことがあったけれど、ふと気がつくと今の世の中、そのころの外国並みに 白黒をつけて、結果をすぐに求めるようになってしまったことに気づく。
昔の日本人ならばだれしも持っていた、一見あいまいなように見えても、相手をゆるく深く思いやる心、相手を尊重する心やおくゆかしさというものは、失いかけてみると貴重なもののように思える。今は、言わない方が非難される世。昔の日本の察する文化の方がいまになってみると数段上を行っていたように思う。
この本を読みながら、そんなことをつらつら思った。
激しくはないけれど、じんわりとあたたかく面白い話だった。