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February 22, 2005

号泣する準備はできていた

■著者 江國香織
■星  ☆

号泣する準備はできていた
江國 香織

新潮社 2003-11-19
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■説明
12編の短編からなる 直木賞受賞作とのこと。

■感想
タバコを吸う高校生が、タバコを吸わない高校生を見て「やつらは子どもだ」と評しているかのような。
そんな印象を受けた。 ファンの方には大変申し訳ないのだけれど、私はどうも彼女の良さがいまのところわからないように思える。でも、1人の作家の本をまとめ買いするクセがあるので、まだまだ手元にある。とりあえず買った分だけは読んでみて「すべてがそうなのか。そうでないのか」見極めたいと思っている。 

 さて、タバコを吸う高校生は果たして大人か? 大人の皆さんにはおわかりだとおもうけれど、タバコを吸うからといって、法律に違反してみたからといって決して大人ではない。大人でも タバコを吸うことに価値を見出さない人もいる。 しかし、タバコを吸う高校生が「やつらは子どもだ」と吸わない高校生を評したり、吸わない人達を自分の尺度で見て「吸うだけの勇気がないんだ」と言ってみたり、わざと健康に悪いことをすることがかっこよいことなんだと考えていたりするような。

 アマゾンの評を見て ああ、うまいこと評しているなと思ったのが、
naonao-703 さんの評だった。


あとがきに「いろんな人たちがいろんな場所で、いろんな記憶を持ち、いろんな顔で、いろんな仕種で、でもたぶんあいも変わらないことを営々としている。」とあるが、いろんな人はこの短編集には見えてこない。
「同じタイプの人がいろんな場所で、同じような価値観の人が・・・」と
私には感じてしまいました。

まさに、と思いクスリと笑ってしまった。

 まだ2冊しか読んだことの無い彼女の本だけれど、どうも良さがわからないのはどうしてだろう。すべての物語が1人の人の頭の中の想像で、しかも自分がヒロインという美化された物語を延々と聞かされ続けているような、もうあなたの頭の中の御伽噺はおなかいっぱいで胸焼けですという感のせいだとおもう。
(もちろん、小説というものはそういうものだけれども、少なくとも私がその話の中に入り込める楽しみというのは、年齢も性別も環境もすべて違っていることをまるで自分のことのように描き出してくれ疑似体験させてくれるその腕にあるように思うのだ。)

 主人公には恋(それとも性欲?)はあっても人に対する愛はない。 そこには胸がくるしくなるほどの恋愛もなければ、なにもない。そこには、思考がなく、空虚な頭だけがあるようだ。ちょっとした、刺激的な文章がちらりちらりとほんの少量振られたコショウのように、気づかない程度にちりばめられいて、こういう口当たりをよくしたエロチシズムが好きな人のための、御伽噺?なのかしらと思った。
 まあ、性欲ばかりで行動している男性が描き出されたものが世に作品としてあるのだからして、性欲を基準に行動する女性をそれとはあまりわからないように美化して描いてもおかしくはないのかもしれない。

あまりにもそういう評だけではよくないかと思い、以下に2つ12編のなかで、「いくつか選べ」といわれたらというものをピックアップしておこう。
 「じゃこじゃこのビスケット」この短編集のなかで比較的まだ受け入れられるものだったとおもう。
今の自分からすると、あまりにもみっともなくて、軽やかでもロマンチックでもなく、ただぎこちない、でも本当はいとおしいのかもしれない少女時代。

「溝」 妻の裏表の使い分けを奇妙なものでもみるような離れた視線で観察し、最後の一ページでどんよりと不気味なまでに得体のしれない妻の存在(結局まったく分かってなかったことを実感する困惑)が印象的。 

※ちりばめられたエロチシズムと書いたけど、それは本当に気づかない程度、胡椒程度にしか振られてないので、それを期待して読むとまったくないです。

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