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October 23, 2004

ねじまき鳥 クロニクル

■著者 村上春樹
■星 ☆☆☆☆
ねじまき鳥クロニクル (第1部)新潮文庫
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■感想
先日出たばかりのアフター・ダークを海外の電車の中でたくさんの日本人がむさぼり読んでいるという記述をblogめぐりでみつけた。
 彼の本を村上朝日堂1冊しか読んだことがない私にとって村上春樹とは、村上朝日堂なわけで、私と感覚的に共通するところの多い現実感のある人という印象だったわけだが、この本を読んでみて その外国の電車の中で会う日本人会う日本人がみなアフター・ダークを読んでいるというその光景のあまりのシュールさが、この本にピッタリなのだった。 
 
 そう。もともと、この本は私にとって「これは読まない本だ」と思う本だった。 題名が「ねじまき鳥 クロニクル」だから。
大人の童話には興味がなかった。 なぜうちにこの本があるかというと話は長くなる。 もともと興味がないはずなのに、なぜか私は「読んでみたい」と言ってしまい、保育園の役員だったというつながりだけでほとんど個人的な会話もしたことのないある人からもらった本だったのだ。 この不思議な因縁?もこの本に必然としてあった出来事のようにさえ思える。 彼女については、夕闇の中保育園に迎えにいった娘さんと二人で帰っていく姿を思い出すくらい、後はまるでこの本の中で主人公に関わってくる人のように、単に、伝言を伝えていただいたり、その程度のことしか知らないのだった。
 そもそもそれも、彼女の子どもさんが卒園した数年前の記憶だ。それ以来彼女には会っていない。そうして、本をもらって何年もして、彼女の顔さえ思い出せず、夕闇に歩く彼女と娘さんの姿しか思い出せない頃になって、ふと私はこの本を手にとることになったのだ。

 さて、本を開いてみた。童話ではなかった。「ねじまき鳥」は実際は「ねじまき鳥」ではなかった。まずはそれに驚きながら読み進めるのだが、この本は静かで深い孤独に満ちている。現実とも夢ともつかない白昼夢のような長い物語が繰り広げられるわけだけれども、主人公は淡々と、まるで、今日見た夢を誰かにかたるがごとくにどこか自分をさえも離れた場所で見守っているかのようである。
 自分を取り巻く人々との奇妙なズレを感じながら、どうみても現実とは思えない不思議な出来事をそのまま淡々と受け入れて物語が進むのである。
 
 主人公は主夫をしている。熱烈な恋愛結婚をした末の結婚も、今では他人との生活のように心の交流がない。静かで孤独な世界だ。
 そうして、どこか現実感のない白昼夢のような世界が勝手に自分の周りに繰り広げられていく。自分だけが取り残されているのか、自分だけが現実なのか...。

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