■著者 中島らも
■発行 双葉社
ロバに耳打ち
■説明
2001年3月から2002年6月まで「CINTAI」近畿版に連載されたもの。随想。
らもさんの肩の力の抜けた、リラックスした語り口が緊張を解きほぐすようにおもう。
■感想
中島らもさんは、朝日新聞の明るい悩み相談室で「なんだか面白い人だなあ」とおもってはいたものの、テレビで顔写真を見る程度で、本となったものを読んだことがなかった。
読んでみると、この題名の通り、独特のユーモアを感じ、それも、「他人に挑戦する」ようなものではなく、あくまでも自分の世界を淡々と語るような そういう語りに魅力を感じた。
なかなかこういう肩の力の抜けた自然な文というのは書くのが難しいと思う。これが彼の魅力なのだろうかと思い、次の本を読んでみようと思っているところだ。
中に「一升酒を飲む」というのがある。
昨日、酒を一升のんでしまった。ぶ厚いイカの一夜干しが手に入ったのだが、こいつがぐいぐいおれの手を引っ張る。十本の手で引っ張るのである。「お酒がほしいよう。お酒がほしいよう」イカがそう言っておれの左腕を引っ張るのだ。
かとおもえば、別のエッセイでは
家というものは、内包するものが肝心なのであって、ただでかいだけではつまらない
気楽に読めるけれども、くすっとわらったり、なるほどとうなずいたり、ゆるゆるとのんびりとした「らも時間」の中でリラックスすることができる時間が送れることうけあいだ。
通勤時など、本を読む気がしないときなどにもおすすめだ。
このエッセイ集の中にも、よく転ぶということが書かれていた。らもさんのご冥福をお祈りします。