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October 18, 2003

真昼の悪魔

監督【著者】 遠藤周作
★★★★

説明
冒頭に神父さんが 「エクソシスト」を例にとって 悪魔は実在する と説く場面からこの物語は始まります。 主人公は美貌で愛らしい笑顔をもつ女医。
 物語の中には なんとも殺伐とした事件が沢山でてきます。 

感想
遠藤周作の本です。 ある意味感想が書きにくい本でした。
遠藤周作さんがクリスチャンだということを知っていたので、気になって余計に私の中でさらっと読めない部分があったのかもしれません。
 私はほぼ無宗教。でも、その人がどういう宗教を信じているかというのは強引な勧誘など迷惑がかからない限り気にしません。


最近起こる理解不能な事件。まったくそれと同じような動機で、いえ、動機はないと言ったほうがよいかもしれない。そんな事件がどんどんと起こります。 そうして、それがなにひとつ解決しない。現代の苛立ち 理解できない不安感。焦燥感。それが最後まで続くというような読後感です。

 たとえば、最近の不快感を覚える事件とは結局はどういうものだろうかと自問すると
「自分勝手」というキーワードがありそうに思います。 相手も自分と同等の人間としてみることなくただ、「自分が不快だから」「自分がうまくいかないから」「自分がやりたかったから」という理由であり、そこにはそれ以上の説明がつかないものが多いです。 
 それが、世間の人たちには理解不能であり、行動が予測できない恐ろしさを感じさせます。

「友達が欲しかったから監禁した」「自分の人生がうまくいかないからできるだけ金持ちの子供を殺害した」「借金をばらされそうだったから殺した」 そこには自分しかありません。いずれも相手を人間として見ていないという共通点があります。自分だけを見つめ自分だけが大事で 相手を都合の良い存在として認めることがあっても人間として見ない。
 
 この本の主人公の女医もまさにそういう人です。自分が罪悪感を感じてみたい。こういう悪いことをしたら少しは罪悪感を感じて空虚な気持ちがなくなるのではないか というただそういう理由で表に出ない悪事を巧妙に行います。 そうして、この小説には 勧善懲悪もなく、また宗教の目に見えた救いも現れません。発生する事件、女医の口にする言葉どれも どこかで聞いたことのあるようなものです。 クリスチャンである遠藤周作はこの本で何を言いたかったのだろう。 宗教の不在を言いたかったのだろうか。 読み終わったときに遠藤周作という人を考えてすっかりと腕組みをしてしまった本でした。

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