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August 26, 2004

もえるイロイロ島

原題 ★くまのチロ吉ものがたり★ もえるイロイロ島
作者 沖井千代子
絵  田畑精一
星 ★★★★★

説明
広島の町に住んでいる ジュン・ケン・ミミコは友達。ミミコはいつもぬいぐるみのくまのチロ吉をつれている。今日は、ミミコがお母さんからセロファンをもらったので、それをもってジュン・ケンと会った。
公園にいるおじいさんに、船を折ってもらおうと思ったのだが。

感想
子どもの頃に読んで好きで好きでたまらなかった 3人と1匹の冒険物語。
子どもが私が読んだ年齢に近づいてきたのでいても立ってもいられなくなり探しました。ところが、絶版。
 図書館にあるとのことで夏休み。図書館で書庫の中から探し出し、家でよみなおしてみました。

 物語の最初の部分など、今では使われない単語やあまりなじみのない単語ががひしめいていて、子どもがそのまま理解するには多少のハードルがあるかもしれないものの、物語の要素として、大変充実していることにあらためて気がつきました。
(例)「えんさき(縁先)」:縁側がある家は今ではまれではないでしょうか。「足踏みミシン」「遊園地」:これは今でいう公園のこと 「遊動円木」:これは私にもどういうものかわからないので検索してみました。(2つの支柱の間につるした鉄製の板に子どもが座り、ブランコのように揺らす) など。

 子ども達は、なにか特殊な能力があるわけでもない、小さな約束も破ったことがあるようなただ普通の子ども達。その子ども達が巻き込まれた冒険の旅で、ぬいぐるみのくまを含め、一生懸命おかれた状況を打開しようと力をあわせて考え、行動します。
 また、心理描写がとても豊かで、大人になった今でも、チロ吉と子ども達3人の仲間になってイロイロ島探検をしているかのような気分で本を読みすすめられます。
 表紙裏の単純な地図は、物語が進むにあわせて何度も何度も見た覚えがあります。息子に読んでやるときも、息子は何度も表紙裏地図をみながら物語を楽しみました。

今回読んでみてなによりも驚いたことはネタバレに繋がるので、色を変えますね。

なによりも驚いてしまったのは、その冒険で勝利を勝ち取るまでに犠牲者がでてしまいます。
つまり人の死というのがかかれているのです。 最近私が読んだ子ども向けの本には、人間の死というものは書かれているものはありませんでした。 昔話でさえ、人が死ぬという描写を抜かしてしまうというこのご時世。しかし、現実は人間は些細なことで死んでしまう生き物なのです。 ただ「残酷な描写をなくす」「死を描かない」ということが本当に子ども達のためになるかというと今の私にはそうは思えません。
  仲間の死を本の中で疑似体験し、悲しい思い、やりきれない思いそういう思いを疑似体験することも必要なのではないかと思うのです。

 今の子ども達は、核家族化が進み、死を身近に体験することは以前よりももっと少なくなりました。
そうして、体験する死は、幾ら殺しても大丈夫な死や、自分はヒーローで悪者を殺すという死ばかりです。 取り返しのつかない命を知り、命の大切さを知るという貴重な擬似体験は本からも奪われつつあるのではないかと思ったのです。

 死の描写をさける一方で、敵や架空の生物をどんどんと殺していくゲームや、どんなに攻撃しても相手が死なない(力を失うだけで、再挑戦ができる)ゲームが増えていくのは問題なのではないだろうかと、この本のなかで登場人物の死に涙を流しながら感じました。 実際の人間の死とは取り返しのつかないものなのに。

魔法も使えない、特殊能力のない普通の子ども達が力をあわせて困難をのりこえていく物語。
私がこの本に★を五つもつけたのは単なるノスタルジーだけではないと自負しています。
 復刊してほしいと思います。

もし、復刊にご賛同いただける方がいらっしゃいましたら、下のリンクで復刊リクエストをお願いします。
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