■著者 宮部みゆき
■星 ★★★★
レベル7新潮文庫
■説明
物語は都市をみおろす男の描写からはじまる。
男はもうひとり若い男と会う。「尾行は大丈夫ですか?」「降りるならいまのうちだ」などとなにやら不穏な打ち合わせのようだ。
そうして、突然場面が替わり、男が目を覚ます..... が、自分の様子がおかしい。どうしてだ。なぜだ。と話しは展開していく。
■感想
なんとなくお気づきだと思いますが、私は映画にしろ本にしろ、なんとなく面白いと思うとその作者や俳優、女優を中心に次に読んだり見たりするものを決めることが多いのです。
この本も、宮部みゆきだからこそ 宮部みゆきの本を何冊かよんだことがあるからこそ味わえる楽しみがあるような気がします。
まず、本を読み始めて数ページで 読者は「私が読んでいるこの物語のジャンルは何だろう」と思い始めると思います。はじまって数ページで まったく場面が変わってしまい、読者のなかには戸惑う人もあるかもしれません。
題名のレベル7とは、果たして何のことなのだろう。 最初から読み終わるまで、まるで鏡の迷路にでも迷い込んだかのように、登場人物と一緒に出口を探す旅にでるかのようです。
さて、この本。そういう楽しい本なのですが、全体的に流れている「自分探し」のテーマは心に響きました。以下内容を引用しますので、 文字色を変えます。内容に触れられていても構わないと思う方はマウスで反転してご覧下さい。
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(だけどそのひと、みさおちゃんの友達なんだろ?)
(あたしが勝手に友達だと思ってるだけかもしれないもの)
(バカだなあ。なんでそんなふうに考えるの?みさおちゃんが友達だと思っているなら、相手だってそうだよ。友達って、そういうものだよ。今日からあなたと私は友達よ、なんて宣言してからなるもんじゃないよ)
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このあたりは みさおの過去の経験からそういう考え方がみについているわけですが、
実際に、友達ってなんだろうと考えたときに、これほど危うくて定義のしようがないものはないようにも思えます。その不安定な感じ。つきつめればつきつめるほどわからない感じ。
そういう感覚ってわかるなあ。などと思いながらよみました。
他にも物語のクライマックスというあたりに 「ああ」と思う台詞があるのですが、これを書いちゃオシマイだと思うので。。。
とにかく、軽くサクサク読める本ですが、満足度が高い本だと思います。